肥満といえば不健康の代名詞。これは何ら大げさなことではありません。太っているというだけで、様々な病気の発症リスクが上がってしまうのです。
この記事では普通の人に比べて肥満の人が発症しやすい深刻な病気の数々を紹介しましょう。「自分には関係ない」などと決して目を逸らさないで、最後まで読んでくださいね。
命や日常生活の危機に直結する深刻な病気のリスクも
心不全
心臓の働きが不十分になることで体の様々な箇所に過度な負担がかかり、じっと寝ていられなくなってしまったり、慢性的な息苦しさを感じやすくなる病気が心不全です。急性心不全は直接の死亡の原因となる病気であり、慢性的な心不全も将来的な心筋梗塞や狭心症といった重大な病を招く可能性を高めます。心不全の原因として、過労や長時間の入浴と並んで肥満が挙げられています。肥満は心臓への負担も強いるものであることから、心不全のリスクを高めてしまいます。
脳梗塞
脳の組織を壊死させ、重度の後遺障害が残ったり、治療が遅れた場合には死亡に繋がる確率の高い病気である脳梗塞も、肥満と深く関連した病気の一つです。脳梗塞は厳密には3種類のパターンがあり、肥満が引き金になると考えられているのは「アテローム血栓性脳梗塞」です。
内臓脂肪が蓄積されることによってPAI-1と呼ばれる物質が分泌されるようになるのですが、この物質が脳梗塞の原因となることが研究によって既に解明されています。高血圧やコレステロールも動脈硬化を招く原因となるため、太っている人ほど脳に関連する重大な病気にかかりやすいことが分かっています。
腎臓病
メタボリックシンドロームという言葉は既にお馴染みですが、このメタボは慢性腎臓病を発生する原因となるほか、腎臓病を進行させるための役目も果たすということをご存知でしょうか。
慢性腎臓病を放置すると、それが原因で腎不全を招くリスクを大幅に高めてしまいます。腎臓の機能は一度喪失すると元通りに回復させることが現代医学でも困難であり、場合によっては数日置きの透析治療が強いられることもあります。透析を受けることで命の危険は回避することができますが、これまでの日常生活を維持することは困難となり、生活スタイルや仕事の内容を大幅に見直さなければならなくなります。
生活習慣病や慢性的な痛みの多くも肥満が原因
糖尿病
肥満が原因で発症する生活習慣病の中で代表的な存在が糖尿病です。過食をはじめとして、運動不足、そして肥満が糖尿病を発症させる原因となっています。
糖尿病で恐ろしいのは、数多くの合併症を引き起こしてしまうという点にあります。糖尿病網膜症を患うと最悪の場合には失明に至ってしまいますし、糖尿病腎症は腎不全を引き起こす原因になります。重い病気になると、脳卒中や心筋梗塞のリスクも高めることになります。最近になって尿の量がやけに増えたという場合や、疲れやすさを感じるようになったという場合、さらに喉が頻繁に乾くといった自覚症状が現れたら、すぐに病院で検査を受けましょう。
痛風
ぜいたく病と呼ばれることもある痛風は、足の指先に突然激痛が襲うことで有名な病気であり、発症すると歩くことはおろか立っていることさえままならなくなってしまいます。また、一度投薬による治療を受けると、一生涯に渡って通院をしながら薬を飲み続けなければならず、患者にとって非常に大きな負担となってしまいます。痛風の原因となる高尿酸血症は肥満の人ほどかかりやすい病気であるため、必然的に肥満が痛風に繋がってしまうというわけです。
脂肪肝
脂肪肝の患者の大半が糖尿病を併発しているか、あるいはメタボリックシンドロームの状況に置かれた肥満体です。肝臓は沈黙の臓器と呼ばれるほど痛みや違和感といった自覚症状が現れない臓器であるため、脂肪肝であることを自覚することは不可能です。
脂肪肝を放置していると、やがて肝硬変や肝臓がんといった死亡のリスクの高い病気を引き起こしてしまう可能性があるため、肥満体の方は定期的に病院で肝臓の状態をチェックしてもらうべきでしょう。
椎間板ヘルニアや腰痛
体重が増えれば増えるほど、下半身への負担が大きくなっていきます。その影響を特に受けやすいのが腰であり、肥満の方ほど椎間板ヘルニアや腰痛を招くリスクが高まります。太っていくと、基本的には最初に腹部を大きくさせます。それと同時に自然と体全体が前傾姿勢になり、腰が不自然に曲がってしまうことになります。こういった現象も腰痛や椎間板ヘルニアに関与してしまうのです。ダイエットを成功させたことによって腰痛から解放されたという方も多く存在しています。
ホルモン異常によって生殖機能への影響も
卵巣機能や精子の質の低下
体内脂肪が増えると、その影響でエストロゲンが過剰に分泌されるようになり、排卵を抑制するようになります。その結果として生理不順を招くなど卵巣機能を低下させ、妊娠の確立を大幅に低下させてしまうのです。
これは男性にとっても無関係な話ではなく、BMIが25以上に達すると精子の質が低下するということが分かっています。また、不妊の原因の12%は肥満であると指摘されています。太っているというだけで男女共に子供を授かりにくい体質になってしまうので、近い将来の出産を計画している方は早めにダイエットに取り組むということも手ではないでしょうか。
ED
男性特有の問題であるEDも、肥満と大きく関わりを持つ障害です。肥満によって動脈硬化を招くことは先に紹介した通りですが、その影響は陰茎にも及びます。標準体型の男性と比較した場合、肥満の男性は海綿体に血液を送りにくくなってしまうため勃起がしにくくなり、その状態が慢性化することによってEDに発展してしまいます。男性の糖尿病患者のうち約30%もの方がEDであるということも見過ごせないデータです。
その他にも様々な病気や障害のリスクが生じる
多汗症
人間の体は汗をかくことによって熱を放出し、体温の調整を行っています。しかし、肥満体型の方の場合は体の内側に脂肪が溜め込まれており、熱を外に向けて放出しにくくなってしまいます。上がり続ける体温を冷まそうとして体が働き、その結果として標準体型の人と比較して多くの汗をかくようになります。これが多汗症です。
太っている人は汗をかきやすいと言いますが、これにもれっきとした科学的根拠があるのです。汗をかくことによって体臭の原因ともなり、悪循環を招いてしまうことも問題のうちの一つです。
肥満低換気症候群
睡眠時間をたっぷりと取っているにも関わらず、起床した際の頭痛やだるさに悩まされたり、日中に猛烈な眠気が襲ってきて仕事にならないという方も存在します。この原因として考えられるのが肥満低換気症候群です。
睡眠時に脂肪に圧迫されることによって呼吸が困難な状況を招いてしまい、睡眠時の息継ぎが上手くできないことが原因でこのような問題が生じます。肥満低換気症候群の治療をせずに18ヶ月間を過ごすと、23%もの方が亡くなるという恐ろしい報告も上がっているほど驚異的な病気ですから、症状に身に覚えがあるという肥満体型の方は早めに病院で検査を受けてみるべきでしょう。
甲状腺機能低下症
甲状腺機能低下症を発症すると、基礎代謝が低下してしまいます。それによりカロリーを満足に消費させることができなくなってしまい、体内に脂肪を蓄積させてしまい太ってしまうことがあります。積極的な食事制限を行ったり、運動量を明確に増やしているにも関わらず全く成果が現れないという場合には、甲状腺の機能低下を疑って病院で検査を受けてみることをおすすめします。
肥満の人は健康にもっと気を使うべき
太っている人は痩せている人に比べて、重い病気を発症する可能性が極めて高い体質ということを必ず念頭に置いておきましょう。自分の健康には気を使いすぎることは無いぐらいに、気を使わなければならないのです。
心不全、脳梗塞、糖尿病。この記事で紹介した病気は、一度発症するとその後の人生を大きく狂わせてしまう怖い病気ばかりです。発症してからはもう手遅れ。そうならないように、普段から運動や適切な食事をこころがけるようにしましょう!
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